歴史はどうやって分かる?古文書・発掘・研究から戦国時代を読み解く方法を解説
私たちは、なぜ400年以上も前の戦国時代について知ることができるのでしょうか。もちろん、当時を直接見た人はもういません。
それでも、武将が残した書状や日記、絵図、城跡、地中から発見された陶磁器や貨幣など、さまざまな「手がかり」が残されています。歴史研究とは、それらを集め、比較し、「何が確かで、何がまだ分からないのか」を少しずつ明らかにしていく作業です。
この記事では、戦国時代の歴史がどのように解き明かされていくのかを、初心者向けに紹介します。
対象読者:歴史初級者
読了時間:約30分
昔の出来事は何を手がかりに調べる?
戦国時代を調べる手がかりは、古文書だけではありません。日記や絵画、古地図、城跡、発掘された遺物など、性格の異なる資料を組み合わせて考えることが重要です。

歴史研究では、過去について何かを語る前に「その根拠は何か」を確認します。文字として残された記録だけでなく、絵画や地図、建物の痕跡、地中から出土した道具なども重要な材料です。国立歴史民俗博物館でも、古文書・絵画など多様な資料が研究・公開されています。
つまり歴史とは、昔から伝わってきた物語をそのまま覚えるものではありません。残された手がかりから、過去の姿をできるだけ合理的に復元していく学問なのです。
歴史を調べる手がかり「史料」とは?
あけぼの歴史の本を読んでいると、よく「史料によれば」という表現が登場します。この「史料」こそ、研究者が過去を考えるときに出発点とする大切な手がかりです。
「史料」とは、過去の出来事や社会を調べるために利用する資料を指します。武将が発給した書状、命令を伝える文書、寺社の記録、日記などの文字史料は、その代表です。
ただし、それだけではありません。絵画や絵図、古地図、建物、城跡、墓、陶磁器、瓦、貨幣なども、問い方によって歴史を考える史料になります。
たとえば、ある戦国武将が「いつ、どこで、誰に、何を命じたのか」を知りたい場合、本人や関係者の書状が重要です。一方、「その城がどんな構造だったのか」を知りたい場合には、文書だけでなく発掘成果や地形の調査が大きな意味を持ちます。
大切なのは、「史料があれば答えが書いてある」と考えないことです。史料には作られた目的や残り方の偏りがあります。研究者は、それぞれの特徴を確かめながら、過去の姿を組み立てています。
古文書や日記から当時の出来事を読み解く
あけぼの武将の命令や人々の日記には、その時代を生きた人だからこそ残せた情報があります。ただし、書かれている内容をそのまま事実と考えるわけではありません。
古文書(こもんじょ)には、命令・契約・譲渡・安堵など、特定の目的のために作られた文書があります。
戦国時代なら、大名や家臣が発給した書状から、軍事行動、領地支配、外交、人間関係などを知る手がかりを得られます。東京大学史料編纂所では、『大日本古文書』などの史料集を編纂し、多くの史料を研究・公開しています。
一方、日記などの古記録には、書き手が見聞きした出来事や日々の動向が記されます。公的な命令文書とは違った角度から社会を知ることができます。
ただし、古文書にも日記にも「書き手の立場」があります。本人が直接見たのか、人から聞いたのか、何のために書いたのかによって情報の性質は変わります。そのため、作成年月日・作成者・宛先・目的などを確認することが基本になります。
絵図や古地図から昔の城や町の姿を調べる
あけぼの文章だけでは分かりにくい町並みや道、建物、人々の姿を考えるとき、絵図や古地図、屏風絵などの画像資料が重要な手がかりになることがあります。
たとえば、国立歴史民俗博物館が所蔵する洛中洛外図屏風(らくちゅうらくがいずびょうぶ:歴博甲本)は、16世紀前期の京都を描いた重要な絵画資料です。館のデータベースでは、歴博甲本を1525年ごろの作品とし、描かれた1426人についても情報を整理しています。
町並みだけでなく、人々の服装や行動、社会や風俗を考える材料になります。
ただし、絵画は現代の航空写真ではありません。作者が何を見せようとしたのか、実景をどの程度反映しているのか、制作年代はいつなのかなどを考える必要があります。
古地図や城絵図も同様です。後世に作成された図を、そのまま戦国時代の景観だと考えることはできません。文字史料や発掘成果などと照らし合わせることで、初めて当時の姿へ近づくことができます。
城跡や遺物も歴史を知る大切な手がかりになる
あけぼの地面の下には、文字として記録されなかった歴史が残っていることがあります。堀や建物の跡、陶磁器などを調べる考古学も、戦国史を知る重要な方法です。
城跡を発掘すると、柱を立てた穴、建物の基礎、堀、溝、土塁などの遺構(いこう)が見つかることがあります。また、陶磁器、瓦、貨幣、金属製品などの遺物(いぶつ)が出土することもあります。これらは、その場所がいつ、どのように利用されていたのかを考える材料になります。
文化庁は、埋蔵文化財を土地に埋蔵されている文化財と説明し、発掘調査では遺構・遺物の存在だけでなく、それらの相互関係を明らかにして地域における歴史的意義を把握することが重要だとしています。
文字史料に「城を改修した」と書かれていても、具体的にどの堀を掘り、どこに建物を置いたかまでは分からない場合があります。そこで考古学が力を発揮します。
つまり、歴史は「読む」だけでなく、地面からも読み解くことができるのです。
これだけは覚えよう
古文書だけが歴史の証拠ではありません。
文字史料=書状・日記・記録など
画像史料=絵画・絵図・古地図など
考古資料=遺構・陶磁器・瓦・貨幣など
それぞれ得意なことと限界があります。一種類の史料だけで結論を出さず、性格の異なる手がかりを組み合わせることが、歴史を調べる基本です。
古文書や発掘調査から何が分かる?
史料を見つけることは、歴史研究のゴールではなくスタートです。書状なら書かれた内容を、遺跡なら位置や構造を分析することで、初めて歴史の情報になります。

古文書と考古資料では、過去へのアプローチが異なります。書状なら人物の意思や命令、政治・外交の動きを直接的に追える場合があります。一方、発掘調査なら、文字に残らなかった建物や暮らしの痕跡まで明らかになる可能性があります。
さらに重要なのは両者を組み合わせることです。「文書ではこう読める」「発掘ではこう見える」と照合すると、一方だけでは気づかなかった戦国時代の姿が見えてきます。
武将の書状から人物や政治の動きを読み解く
あけぼの戦国武将の書状には、命令や交渉、依頼、感謝などさまざまな内容があります。そこから人物関係や政治・軍事の動きを具体的に追える場合があります。
たとえば、織田信長が家臣や他の大名に送った書状が残っていれば、「誰と連絡していたのか」「何を要求したのか」「その時点でどの地域に関心を向けていたのか」を考える材料になります。
しかし、書状一通だけで人物の性格や政策全体を決めつけることはできません。まず確認するのは、差出人、宛先、日付、内容、花押・印判、伝来などです。日付に年が書かれていない書状では、内容や人物関係などから年代を検討する場合もあります。
また、原本なのか写しなのかという問題もあります。後世の写しでも重要な情報を伝える場合がありますが、原本と同じ扱いはできません。
東京大学史料編纂所では「日本中世古文書フルテキストデータベース」などが公開されており、古文書を体系的に探す環境も整備されています。
一枚の書状は小さくても、他の史料とつなげることで大きな政治史が見えてくるのです。
発掘された建物跡や堀から城や町の姿を考える
あけぼの城跡を発掘すると、現在の地表からは見えない建物や堀の痕跡が発見されることがあります。それらは、過去の空間を復元する重要な手がかりです。
戦国時代の城というと、天守や立派な石垣を想像するかもしれません。しかし、多くの城では土を削ったり盛ったりして曲輪や土塁を造り、堀などを組み合わせて防御していました。
発掘調査で柱穴がまとまって見つかれば、そこに建物が存在した可能性を検討できます。堀が確認されれば、城の範囲や防御の仕組みを考える材料になります。さらに、遺構の重なり方を調べることで、同じ場所が何度も造り替えられたことが分かる場合もあります。
重要なのは、「何かが出た」だけで終わらせないことです。位置・深さ・地層・他の遺構や遺物との関係を記録して初めて、歴史的な意味を考えられます。文化庁も、遺構と遺物の相互関係を明らかにすることを発掘調査の重要な目的として示しています。
陶磁器・瓦・貨幣などの遺物から暮らしを調べる
あけぼの地中から見つかる小さな遺物も、戦国時代の暮らしを語ってくれます。陶磁器や瓦、貨幣などを調べれば、人々の生活や流通を考える材料になります。
たとえば、ある城跡から多数の陶磁器が出土したとします。産地や年代が分かれば、いつごろその場所が利用されたのかを考える材料になります。遠隔地で作られた品が見つかれば、その地域が広い流通網と結びついていた可能性も検討できます。
瓦は建物の性格や年代を考える材料となり、貨幣は流通や経済活動を探る手がかりになります。ただし、「貨幣が一枚出たから市場があった」というように、一点だけから大きな結論を出すことはできません。出土した場所、量、組み合わせ、地層などが重要です。
発掘による出土品は、文字史料に名前が残りにくかった人々の生活を考えるうえでも貴重です。文化庁も、出土品を日本の歴史や文化を理解するうえで欠くことのできない歴史的遺産と位置づけています。
文字の記録と発掘成果を組み合わせて考える
あけぼの歴史研究のおもしろさが特によく表れるのが、古文書などの文字情報と、発掘調査で得られた物的証拠を照らし合わせる作業です。
たとえば、文書に「城を改修した」という記述があったとします。それだけでは、城のどの部分をどう変えたのかまでは分からないかもしれません。一方、発掘によって新旧二つの堀や建物跡が確認されれば、改修の実態を具体的に検討できる可能性があります。
逆に、発掘で大規模な改修跡が確認されても、「誰が、なぜ行ったのか」は考古資料だけでは分からない場合があります。そこで書状や記録が役立ちます。
整理すると、
文字史料:誰が・いつ・何をしたのかを探る
考古資料:どこで・どのようなものが存在したのかを探る
照合:両者がどこまで一致するかを検討する
という流れになります。
どちらかを「正解」と決めるのではなく、異なる証拠を突き合わせることが重要です。
これだけは覚えよう
古文書と発掘成果には、それぞれ違った強みがあります。
古文書 → 人物・命令・交渉・政治などを知る手がかり
発掘 → 建物・堀・道具・生活などを知る手がかり
そして最も重要なのは、両方を照らし合わせることです。
「文書にはこう書いてある。でも発掘結果はどうだろう?」
この問いかけが、歴史をより深く理解する入口になります。
昔の記録に書いてあればすべて事実なの?
古い文書に書かれているからといって、すべてをそのまま事実として受け入れるわけではありません。「誰が、いつ、なぜ書いたのか」を考える必要があります。

歴史研究で非常に重要なのが、史料を批判的に検討する姿勢です。ここでいう「批判」は、史料を否定するという意味ではありません。その史料がいつ、誰によって、どのような目的で作られ、どこまで信頼して利用できるのかを確かめる作業です。
これは「古文書を疑って何も信じない」ということでもありません。史料の性質を理解したうえで、そこから読み取れる範囲を慎重に判断するのです。
誰がいつ何のために書いたのかを確認する
あけぼの史料を読むときは、まず内容より先に「誰が・いつ・誰に・何のために作ったのか」を確認します。それによって同じ文章でも意味が変わることがあります。
たとえば、豊臣秀吉が家臣へ命令を伝える書状と、後世の人物が秀吉について記した物語では、史料としての性質がまったく違います。
研究者は、作成者、宛先、作成年代、形式、花押や印判、紙、伝来などを検討します。「その時代に本当に作られたものなのか」という確認も重要です。
さらに、作成目的を考えます。命令を伝えるための文書なのか、自分の行動を書き留めた日記なのか、後世の人々へ功績を伝える記録なのか。目的が違えば、強調される内容も変わる可能性があります。
現代風にいえば、同じ出来事でも「契約書」「個人の日記」「新聞記事」「回想録」では、書かれ方が違うのと似ています。
したがって、「古いから正しい」のでも「後世だから価値がない」のでもありません。どんな史料なのかを見極めて使うことが大切です。
同じ出来事でも史料によって内容が異なることがある
あけぼの一つの合戦について複数の記録を調べると、日時や人数、人物の行動などが一致しない場合があります。そこから研究者による検討が始まります。
たとえば、桶狭間の戦いについて考える場合でも、織田側に関する記録、今川側に関する文書、後世にまとめられた記録では、残された情報の種類や成立時期が異なります。
このような違いが出たとき、「どちらかが嘘だ」とすぐに決めるのではありません。まず、それぞれがいつ成立したのか、出来事との時間的距離はどのくらいか、書き手は何を知る立場だったのかを確認します。
さらに、数字にも注意が必要です。軍勢の人数などは、史料ごとに大きく異なる場合があります。誇張、情報不足、数え方の違いなど複数の可能性を考えなければなりません。
史料同士の食い違いは、研究を妨げる「邪魔なもの」ではありません。むしろ、なぜ違うのかを考えることで、その史料が作られた背景まで見えてくることがあります。
後世に書かれた軍記や伝承はどう扱う?
あけぼの戦国武将には、有名な逸話や劇的な合戦談が数多く伝わっています。しかし、それがいつ記録された話なのかを確認することがとても重要です。
合戦や武将の活躍を物語として伝える軍記物(ぐんきもの)には、戦国時代を知るうえで重要な作品があります。一方、出来事から長い時間が経ってから成立したものもあり、同時代の書状と同じようには扱えません。
だからといって「軍記は全部創作なので役に立たない」とするのも適切ではありません。後世の人々が合戦や武将をどう理解し、どんな記憶を伝えようとしたのかを知る史料にもなります。近年も戦国軍記や合戦図を史料学的に検討する研究が行われています。
逸話を紹介するときも、
同時代史料で確認できること
後世の軍記に登場する話
地域に伝わる伝承
を分けて紹介すると、史実と物語の距離が伝わります。
「有名な話だから史実」と決めつけないことが、歴史を楽しむうえでも重要です。
複数の史料を比べてどこまで分かるかを考える
あけぼの一つの史料だけで結論を出さず、別の立場から残された記録や考古資料と比較することで、歴史の確からしさを少しずつ高めていきます。
たとえば、ある戦国大名が特定の日に軍事行動を開始したという書状が残っていたとします。別の大名の書状、寺社の日記、家臣の記録などにも関連する記述があれば、それらを並べて時系列を確認できます。
さらに、その戦いに関係する城跡の発掘成果や地形を調べれば、文字史料から推測された軍事行動が現地で可能だったのかを考える材料になります。
ここで大切なのは、「多数決」ではありません。三つの後世史料が同じ内容を書いていても、すべてが一つの古い記録を写している可能性があります。逆に、一つしか残っていない同時代史料が非常に重要な場合もあります。
つまり、
史料の数 → 多ければ正しいとは限らない
成立年代 → 出来事との距離を確認する
独立性 → 同じ情報源を写していないか調べる
立場 → 誰の視点なのか考える
という見方が必要になります。
これだけは覚えよう
史料に書かれていることを、そのまま「事実」と考えるわけではありません。
確認したい基本は、
①誰が書いた?
②いつ書いた?
③誰に向けて書いた?
④何のために書いた?
⑤ほかの史料ではどうなっている?
の5点です。
これを意識するだけでも、歴史記事を読むときの見方が大きく変わります。
歴史の「定説」はなぜ変わることがある?
歴史の説明が昔の本と現在の本で違うことがあります。それは歴史が勝手に書き換えられたのではなく、新しい証拠や研究によって理解が更新された場合があります。

歴史研究は、一度答えが決まれば終了するものではありません。新しい古文書が発見されたり、発掘調査が行われたり、既知の史料が別の角度から分析されたりすることで、それまでの理解が修正されることがあります。
一方、新発見があったからといって、それまでの研究がすべて否定されるわけでもありません。従来説の一部が補強されることもあれば、細部だけ修正される場合もあります。
新しい古文書が発見されることがある
あけぼの戦国時代から400年以上が経過した現在でも、旧家や寺社などに伝わった古文書が調査され、新たな歴史情報が明らかになることがあります。
新しい書状が確認されれば、これまで空白だった時期の行動が分かったり、知られていなかった人物関係が見えてきたりする可能性があります。
ただし、「新発見」という言葉にも注意が必要です。世界で初めて存在が確認された文書だけを指すとは限りません。以前から家に伝来していたものが研究者によって初めて詳しく調査された場合や、知られていた文書の年代・差出人が再検討された場合などもあります。
そして、発見された瞬間に歴史が確定するわけではありません。真贋、年代、差出人、宛先、内容、伝来などを検討し、既知の史料との関係を確認する必要があります。
東京大学史料編纂所では、所蔵史料目録や日本古文書ユニオンカタログなど、史料を探し比較するためのデータベースも整備されています。
「新史料発見」は、答えそのものではなく、新しい検証の始まりなのです。
発掘調査によって新しい事実が見つかることがある
あけぼの文字史料がほとんど残っていない場所でも、発掘によって建物や堀、生活用品などが発見され、それまで知られていなかった歴史が見えてくることがあります。
たとえば、城跡で想定していなかった位置から大規模な堀が見つかれば、従来考えられていた城域を再検討する必要が出てくるかもしれません。建物跡や大量の遺物が確認されれば、その場所の機能について新しい仮説が生まれる場合もあります。
文化庁によれば、周知の埋蔵文化財包蔵地は全国に約46万か所あり、毎年およそ9千件の発掘調査が行われています。発掘成果が現在も積み重ねられていることが分かります。
ただし、一度の発掘ですべてが分かるわけではありません。調査できる範囲が限られることも多く、未調査部分が残る場合があります。
したがって「発掘で定説が完全に覆った」と急いで結論づけず、調査報告書や今後の研究を確認する姿勢が重要です。
同じ史料でも研究によって解釈が変わることがある
あけぼの新しい史料が見つからなくても、すでに知られている史料を別の視点から読み直すことで、歴史の理解が変わる場合があります。
たとえば、一通の書状に書かれた言葉でも、政治状況や他の文書との関係、言葉の当時の用法が詳しく研究されると、従来とは異なる読み方が提案されることがあります。
歴史研究では、史料そのものと研究者による「解釈」を区別することが重要です。同じ文字が書かれていても、それが何を意味するのかについて複数の説が存在することがあります。
ここで、「昔の研究者が間違っていて、新しい研究者が正しい」と単純に考える必要もありません。新説にも根拠の強弱があり、研究者間で議論が続いている段階もあります。
史料をどう位置づけ、どの史料と比較し、どんな社会背景から読むのか。こうした方法によって歴史像は変化します。史料の性格や利用方法そのものを考える「史料論」が研究分野として成立しているのも、このためです。
「分かっていること」と「分からないこと」を区別する
あけぼの歴史を正確に伝えるためには、答えを何でも断定するより、「確認できること」と「まだ判断できないこと」を分けて示すことが大切です。
歴史には、史料によってかなり確実に確認できる事実もあれば、複数の説が存在する問題、史料不足で判断できない問題もあります。
たとえば、
確認できる事実
→ 同時代文書など複数の根拠から確認できる。
有力な解釈
→ 史料に基づき研究者が提示しているが、解釈の余地がある。
諸説がある問題
→ 複数の説があり、研究上の決着がついていない。
伝承・逸話
→ 後世に伝わるが、同時代史料では確認できない。
というように整理すると分かりやすくなります。
初心者向けの記事では、つい「本当は○○だった!」という強い表現を使いたくなります。しかし、歴史では「分からない」という結論にも意味があります。
どこまで分かり、どこから先は推測なのか。それを示すことこそ、歴史を正確に、そして面白く伝える方法なのです。
これだけは覚えよう
歴史の「定説」は永久に固定された答えではありません。
新しい古文書の発見
+
新しい発掘成果
+
既存史料の再検討
↓
これまでの歴史像を検証する
↓
必要なら修正・更新する
という流れで研究は進みます。
新説が出たから「歴史がひっくり返った」と考えるのではなく、どんな新しい証拠が加わり、従来説のどの部分が変わったのかを見ることが大切です。
歴史を調べる流れを年表形式で整理
今回の記事には特定の人物関係を説明する相関図は必要ありません。その代わり、「歴史がどうやって分かるのか」を一つの流れとして整理すると理解しやすくなります。
| 順番 | 研究の流れ | 確認すること |
|---|---|---|
| ① | 史料を探す | 古文書・日記・絵図・発掘成果など |
| ② | 成立を確認する | 誰が・いつ・何のために作ったか |
| ③ | 内容を読む | 何が書かれ、何が分かるか |
| ④ | 他の史料と比較する | 一致点・相違点はどこか |
| ⑤ | 考古資料とも照合する | 現地・発掘成果と矛盾しないか |
| ⑥ | 解釈する | どの説明が史料から妥当か |
| ⑦ | 限界を示す | 何が分かり、何が分からないか |
これは一直線に一度だけ進む作業ではありません。新しい疑問が生まれれば、再び史料を探して検証します。
歴史はどうやって分かる?まとめ
昔の出来事は何を手がかりに調べる?
古文書だけでなく、さまざまな史料から歴史を考える
戦国時代を知る手がかりは、武将の書状だけではありません。日記、寺社の記録、絵図、古地図、城跡、建物跡、陶磁器、瓦、貨幣など、さまざまな史料があります。
それぞれ分かることと分からないことが異なるため、一種類の資料だけで結論を出さないことが重要です。文字・絵画・考古資料を組み合わせることで、政治や合戦だけでなく、城や町、人々の暮らしまで多角的に考えられるようになります。
古文書や発掘調査から何が分かる?
文字と地中の証拠を組み合わせることで歴史が立体的になる
古文書からは人物の命令や交渉、政治・軍事の動きを知る手がかりが得られます。一方、発掘調査では、建物跡や堀、陶磁器、瓦、貨幣など、文字には残りにくい物的証拠を確認できます。
どちらか一方だけを「正しい証拠」と考えるのではなく、両者が一致する点と食い違う点を調べることが大切です。文字史料と考古資料を照合することで、戦国時代の姿をより立体的に復元できる可能性が高まります。
昔の記録に書いてあればすべて事実なの?
「誰が・いつ・なぜ書いたのか」を確認して史料を読む
古い記録だからといって、書かれている内容がすべてそのまま事実になるわけではありません。史料を利用するときは、誰が、いつ、誰に向け、何の目的で作ったのかを確認します。同じ出来事について複数の記録が食い違う場合には、成立年代や書き手の立場、情報源などを比較します。後世の軍記や伝承も一律に排除するのではなく、同時代史料とは性格の異なる史料として扱うことが重要です。史実と逸話を分けて考える習慣を身につけましょう。
歴史の「定説」はなぜ変わることがある?
新発見と再検討によって、歴史の理解は少しずつ更新される
歴史研究は、新しい古文書の発見や発掘成果によって進展します。また、新史料がなくても、すでに知られている史料を新しい視点で読み直すことで解釈が変わる場合があります。ただし、「新説が出た=従来説がすべて間違い」という意味ではありません。どんな証拠が追加され、従来の説明のどこが修正されたのかを見ることが重要です。そして、確実に分かること、研究者の解釈、諸説があること、まだ分からないことを区別する姿勢が、歴史を理解する基本になります。
参考史料・参考文献
一次史料・近世史料
東京大学史料編纂所 『大日本古文書』
諸家・寺社に伝来した古文書を体系的に確認するための基礎史料集です。東京大学史料編纂所では家わけ文書として毛利家・上杉家・島津家などの文書も刊行しています。
国立歴史民俗博物館 『洛中洛外図屏風(歴博甲本)』
16世紀前期の京都の景観や人々を考える絵画史料として参照できます。歴博甲本は現存最古の洛中洛外図屏風とされています。
※特定の軍記物を一つ「事実確認用の一次史料」として掲げることは避けました。軍記は作品ごとの成立時期・諸本・史料的性格を確認したうえで利用する必要があります。
研究書・参考文献
佐藤進一 『古文書学入門』
古文書の種類・様式・読み解き方を学ぶための基本文献です。国立国会図書館の書誌情報でも、古代から近世までの古文書を扱う文献として確認できます。
五味文彦・杉森哲也編著 『日本史史料論』
史料そのものの性格や、日本史研究で史料をどのように扱うかを理解するための参考文献です。
山本博文・堀新・曽根勇二編 『戦国大名の古文書 西日本編』
戦国大名が残した古文書を具体例から考える際に役立つ文献です。
堀新編 『戦国軍記・合戦図の史料学的研究』
軍記や合戦図を史料としてどのように検討するかを、さらに深く調べたい場合の参考になります。
Webサイト・公的機関の解説
文化庁 「埋蔵文化財」
遺跡・発掘調査・出土品の位置づけや、発掘調査の基本的な考え方を確認できます。
東京大学史料編纂所 「データベース検索」
日本中世古文書フルテキスト、古記録フルテキスト、日本古文書ユニオンカタログなど、史料調査に利用できるデータベースへの入口です。
国立国会図書館 「古文書・古記録を読むには」
古文書・古記録の基礎知識や参考文献を調べるためのリサーチ・ナビです。
国立歴史民俗博物館 「WEBギャラリー」
古文書・屏風・絵図などの館蔵資料を閲覧でき、歴史を画像史料から調べる具体例としても利用できます。

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